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MetaはSNSをどこへ連れていくのか|広告AI「GEM」から、個人の居場所を考える

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AIニュース広告とAI

MetaはSNSをどこへ連れていくのか|広告AI「GEM」から、個人の居場所を考える

2026年10月13日、Meta(Facebook、Instagram、Threadsの会社)の技術者たちが、広告を選ぶAI「GEM」の新しい版を報告しました。広告の話ですが、決算説明会での経営陣の発言と並べて読むと、MetaがSNSそのものをどこへ連れていこうとしているかが見えてきます。公式の発表と説明会の原文を中心に(一部は報道と明記して)、大きな行き先から私たちの話へ、順に下りていきます。

原文: Meta's Generative Ads Model (GEM)(Engineering at Meta) 公開: 2026年10月13日 まとめ: STΛCK / 2026-10-15
目次

まず、これだけ

  1. Metaは、AIが作るコンテンツをSNSに加え、それを選んで届ける仕組みも、広告づくりも、AIで強めようとしています。
  2. GEMは広告選びの土台になる大きなAIで、最大規模の事前学習で「大きくするほど当たる」伸び方が見えた部品です。
  3. 知らない人に見つけてもらう競争はAIが作るものと同じ土俵になり、個人に残るのは「この人の続きが見たい」と思われる席だ、というのが私の見立てです。

Metaは「作る・選ぶ・届ける」に、AIを広げようとしている

株主に行き先を話す決算説明会を、2025年10月と2026年7月の分で読むと、3つの流れが見えます。

SNSは「3つめの時代」に入る

2025年10月、CEO(最高経営責任者)のザッカーバーグは、SNSはこれまで2つの時代を通ってきたと話しました。1つめは、友だちや家族、フォローしている人の投稿だけが並んだ時代で、2つめは、フォローしていないクリエイターの投稿が加わった時代です。そこへAIで作られた大量のコンテンツが加わり、2026年7月には、自社の画像と動画のAI「Muse」で一人ひとりに合わせた「ほぼ無限」のコンテンツが生まれると話しています。

SNSの3つの時代。1つめは友だち・家族・フォローしている人の投稿。2つめはフォローしていないクリエイターの投稿。3つめはAIが一人ひとり向けに作る、ほぼ無限のコンテンツ
図1 決算説明会で語られた、SNSの3つの時代。

AIが投稿の中身を読む

2026年7月の説明会で、財務責任者のスーザン・リーは、Instagramの公開されたフィード(ふだんの投稿一覧)とリール(短い動画)の投稿が、すべて大規模言語モデル(文章を読み書きするAI)を通して、話題から調子まで分析されるようになったと話しました。ザッカーバーグは、AIが「その投稿が何についてのもので、なぜ人を引きつけるのか」を理解すると説明しています。司書が本の題名だけでなく中身を読んで、どの棚に置くかを決めるような形です。ただし、芸術として良いか悪いかを判定するとは言っていません。

広告は「目的と予算を伝えるだけ」へ

2026年7月の説明会の時点で、制作から配る相手選びまでをAIで自動にする仕組み「Advantage+」は年間に直して750億ドルを超える売上になり、AIの広告制作道具を1つ以上使う中小企業は900万社に達しています。報道によると、ザッカーバーグは2025年5月のインタビューで、会社は目的と予算を伝えるだけで、制作物も配る相手もAIが決める姿を語っています。会社全体では、2026年の設備投資を1,300億〜1,450億ドル(ファイナンスリースの元本返済を含む)と見込んでいます。

GEMで、広告にも「大きくするほど当たる」が見えた

GEMの報告を自動翻訳すると、新しい設計の名前「Kunlun」が「崑崙山脈」になって少し笑えますが、中身は大事なことでした。

2025年10月、ザッカーバーグは、Facebook、Instagram、広告のおすすめ(レコメンド)をそれぞれ大きなAIが動かしていて、それらを1つのAIシステムにまとめようとしていると話していました。GEMは、広告選びを担う基盤モデル(いろいろな用途の土台になる大きなAI)です。変わったことは3つあります。

①1つの中央の脳にまとめた
やること広告が出る場所ごとの予想を、1つの中央のAIを土台に動かす
仕組みチェーン店が、店ごとの勘ではなく本部の大きな仕組みを土台に品ぞろえを決めるような形
結果対象の利用者で、成果がFacebookで5.8%、Instagramで4.1%、Meta以外で1.6%伸びた

②大きくするほど、素直に伸びた
やることAIの複雑さを2.5倍に、学習の計算量を4倍にする
仕組み最大規模の事前学習(本番の前に、大量のデータで基礎を学ばせる段階)で、文章のAIで知られる「大きくするほど賢くなる」法則(スケーリング則)に似た伸び方が見えた
結果伸び方が読めれば、計算機に大金を投じる理由になる

③長い記録を読むほど、当たる
やること予想に使う行動の記録の長さを、本番で2倍にする(技術的には25倍まで)
仕組み記録を長くするほど当たり方が上がり、その関係がきれいな数式(べき乗則)に乗る
結果昨日の買い物だけ覚えている店員より、何年分も覚えている店員が次を当てる

Facebook、Instagram、広告のおすすめは、それぞれ大きなAIが動かしてきた。広告選びではGEMが1つの中央の土台になり、Metaはさらに3つを1つにまとめようとしている
図2 別々の大きなAIを、1つの中央の脳へ。

Metaの報告では、コンバージョン(購入や登録などの成果)が18.9%、広告のクリック率(表示されたうち押された割合)が12%改善しました。2026年7月の説明会では、スーザン・リーが、利用者を理解するAIの改良とGEMを合わせて、Facebookで広告のクリックが8.3%、コンバージョンが15.7%増えたと話しています。①〜③の倍率も含めて、何と比べたかの詳しい条件はどれも示されていません。どれもMetaの自己申告なので、数字の大きさより、改善が続けて報告されている点を受け止めるのが安全です。

もう1つ大事なのは、学ぶ材料です。GEMは2025年の時点で、広告への反応だけでなく、ふつうの投稿(オーガニック)への反応からも学んでいました。今回の報告には、これを文章・画像・動画へ広げる計画があります。説明会でも、ふつうの投稿と広告のおすすめを同時に動かす土台のAIを作っていると話しています。

Threadsのタイムラインでは、何が起きているか

では、私たちが毎日見るThreadsのタイムラインはどうでしょう。先に断っておくと、今回読んだ公式の資料には、GEMがThreadsの投稿を並べているとは書かれていません。Threadsには、Threadsの並び順を決めるAIがあります。共通しているのは、行動の記録から次を予想するという考え方です。

並び順は、いくつもの予想の組み合わせ

Metaの透明性センターによると、ThreadsのAIは、見る人がその投稿に「いいねするか」「返信を書くか」「投稿者のプロフィールを開くか」「素通りするか」「どれだけ長く見るか」を予想します。材料は、最近の反応、過去1週間のThreadsでの反応、似たアカウントや投稿への反応などです。ただし、これらの予想をどんな重みで足し合わせるかは、この説明には書かれていません。

まず集めて、それから並べる

Threadsでは、まず公開された投稿の一部を集め、合図を読み、最後に順位を付けます。Instagramでリールを次々に出す仕組み(Reels chaining)では、軽いAIで約100本に絞ってから、細かく予想して並べると書かれています。オーディションの書類選考と面接のような2段構えです。新しい投稿を拾うのも速くなりました。説明会では、Instagramのフィードでおすすめされる投稿の半分以上が1日以内のもので、1年前の2倍以上だと話しています。

Threadsは、公開された投稿の一部を集め、いいね・返信・素通りなどを予想して順位を付ける。重みはこの説明に書かれていない。リールを次々に出す仕組みは、軽いAIで約100本に絞ってから点数を付けて並べる
図3 集めてから並べる、2つの例。

見る人が、言葉でAIに頼めるようになった

見る人の側も変わりました。2026年2月、Threadsに「Dear Algo」が加わりました。「Dear Algo」と入れた公開の投稿で、増やしたい話題や減らしたい話題を書くと、3日間タイムラインが調整されます。発表の時点で使えるのはアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドで、日本は入っていませんでした。7月の説明会の時点で、Threadsは月に5億人以上が使うまでに育ち、4〜6月には全世界で広告を出せるようになりました。

個人でSNSをやる私たちに、残る席

ここから先は、Metaが言っていることではなく、私の見立てです。今回読んだ資料では、Metaは個人の居場所について話していません。

見つけてもらう競争は、AIと同じ土俵になる

厳しい面から書きます。知らない人に見つけてもらうおすすめの枠は、3つめの時代にAIが作るほぼ無限のコンテンツと同じ土俵になると私は考えています。AIは疲れずに、一人ひとりに合わせて作り続けられるので、量で競う戦いは個人にとって厳しくなるはずです。新しい投稿を早く拾う流れが強まれば、1本の当たりに頼るやり方も続きにくくなるかもしれません。

近道は、公式に塞がれつつある

近道が効きにくくなっていることも、公式の文書から読めます。Facebookでは、他人の動画や写真を不適切に何度も使い回すアカウントは、一定期間収益化プログラムから外され、配る量も抑えられます。特定の行動を呼びかけるのではなく、反応を集めること自体を目的に「いいねして」「コメントして」と頼む投稿はエンゲージメント・ベイトと呼ばれ、配る量を抑える対象の一覧に入っています。一方で、自分の見方を加えた再シェアやリアクションは歓迎すると書かれています。どちらもFacebookの決まりですが、AIが中身まで読むようになるほど、こうした近道は見抜かれやすくなっていくと私は見ています。

人間が強いのは「この人の続きが見たい」席

残るのは、1つめの時代からある、フォローしている人の投稿が並ぶ席だと私は考えています。AIは無限に作れても、「あの人」の続きは作れません。誰かをフォローするのは、作品1枚が良かったからというより、この人が次に何を作るかを見たいからです。

そう考えると、「なぜそれを作ったか」の意味が変わります。うまく見せる飾りではなく、知らない人に見つけてもらった1回を、「続きが見たい」に変える理由になります。Instagramのように、AIが中身を読む場所では、何の人なのかを言葉で説明できるほど、届くべき相手にも見つけてもらいやすくなるはずです。

2つの席。見つけてもらう席は、AIが作るほぼ無限のコンテンツと同じ土俵で、量と派手さでは勝ちにくい。続きが見たい席は、フォローされている人の席で、あの人の続きはAIには作れない
図4 見つけてもらう席と、続きが見たい席(私の見立て)。

まとめ

AIが作るものが増え、選ぶ仕組みも広告もAIで強まるほど、知らない人に見つけてもらう競争は厳しくなると私は見ています。そのとき個人に残るのは、「この人の続きが見たい」と思われる席だと私は考えています。

次の一歩は1つだけです。自分のアカウントを、知らない人に一言で紹介する文を書いてみてください。感想はFunStackのDiscord「作業ラボ」の部屋で聞かせてください。

ことば帳
レコメンド
その人が次に見たいものを予想して出す、おすすめの仕組みです。
スケーリング則
AIを大きくして計算をかけるほど、性能が決まった伸び方で上がるという法則です。
基盤モデル
いろいろな用途の土台になる大きなAIです。GEMは広告選びの土台です。
オーガニック
広告ではない、ふつうの投稿です。
エンゲージメント・ベイト
反応を集めること自体を目的に、「いいねして」「コメントして」と頼む投稿です。
大規模言語モデル
大量の文章で学んだ、文章を読み書きするAIです。ChatGPTなどの中身にあたります。

出典

原文: Engineering at Meta「GEM」(2026-10-13)
2025年のGEM報告: Engineering at Meta(2025-11-10)
決算: 2026年第2四半期の発表(2026-07-29)、同日と2025-10-29の決算説明会の書き起こし(Meta Investor Relations)
並び順: 透明性センターThreads / リール
Dear Algo: Meta Newsroom(2026-02-11)
配る量の決まり: Engagement bait / 使い回し投稿(2025-07-14)
インタビューの報道: PPC Land
※ 確認日は2026年10月15日です。説明会の発言は書き起こしの原文で確かめました。

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