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「なんかAIっぽい」を直せる人は、何が違うのか

STΛCKSTΛCK公開 更新 読了 8 分

AIエージェント評価ループ

「なんかAIっぽい」を直せる人は、何が違うのか

AIに画像やスライドを作らせて、見た瞬間に「なんか違う」と思う。でも何が違うのかを言えなくて、そのまま採用してしまう。この記事は、ファンスタメンバーからもらった「AIの成果物を採点して、失敗をためて、改善につなげる仕組みを作りたい。いつ動かせばいい?」という質問への答えです。答えの芯は仕組みの話ではなく、自分の目と言葉の話でした。STΛCKがサムネ・スライド・画像の制作で毎日回している順番を、そのまま書きます。

きっかけ: ファンスタメンバーからの質問(2026年9月15日) まとめ: STΛCK / 2026-09-24
目次

まず、これだけ

  1. AIの成果物が良いか悪いかは、自分の目で見た瞬間に決まります。ここはAIに代わってもらえません。
  2. 直せない本当の原因は、失敗の種類が分からないことではなく、見た違和感を言葉にできないことです。
  3. だからAIをアートディレクターの位置に置いて、毎回「何をどう作ったか」を言葉にさせ、自分は決めるだけにする。採点や改善の仕組みは、その後ろに付けます。

きっかけの質問

メンバーからもらった質問は、要約すると2つです。

質問1
やることスキル(AIにやらせる仕事の手順書)で作った成果物を採点し、失敗の種類を記録して、改善の方向を出すスキルを作りたい
仕組み採点役のスキルを別に用意し、記録をためる
結果どういう条件で動かすのがいいか、が知りたい

質問2
やること作業中に「本当は使うべきスキル」の使い忘れを監視するスキルを動かしている
仕組み使い忘れを見つけたら注意を出す
結果効いているかを測れていない。どう確かめればいいか、が知りたい

別の話に見えますが、答えは同じ形です。どちらも「仕組みが動いていること」と「仕組みが効いていること」を分けて、効いているかを自分の目で確かめるところから始まります。

評価は、一本の鎖でできている

成果物の評価を「採点する仕組み」という1個の箱で考えると行き詰まります。実際には5つの輪がつながった鎖で、材料は左から右へ流れます。

評価は一本の鎖。目で見る、言葉にする、採点基準にする、毎回チェックする(内側のループ)、たまったらスキルを直す(外側のループ)
図1 右端の「たまったらスキルを直す」が質問1の仕組み。左の4つが無いと、ここに材料が届かない。

1つめは目で見る。2つめは見た違和感を言葉にする。3つめはその言葉を採点基準にする。4つめは制作のたびにその基準で毎回チェックする(この記事では内側のループと呼びます)。5つめは、チェックの記録がたまったらスキルを直す(外側のループ)。

質問1の「採点して改善する仕組み」は5つめの輪です。ここから作り始めると、4つめまでが無いので材料が届かず、点数だけが並んで改善の方向が出ません。作る順番は左からです。

差は感性ではなく、言葉

画像も動画もスライドも、良いか悪いかは見た瞬間に自分の中で決まっています。採点をAIに任せて数字だけを見る形にした瞬間、それはAIの評価軸に寄っていくだけで、自分の作るものの質は上がりません。

壁は「なんか違う」から先が言えないこと

「色味が変」「AIっぽい」「安っぽい」までは誰でも言えます。でもそれは感想であって指示ではないので、次の生成は変わりません。本職のデザイナーが強いのはここです。「余白を詰める」「彩度を落とす」「視線の抜けを作る」と、違和感をそのまま指示の言葉に変えられる。差は感性というより言語化の差で、その差は経験からくる語彙があるかどうかで決まります。

逆転:AIをアートディレクターの位置に置く

では本職でない人は諦めるしかないのか。STΛCKの答えは、順番を逆にすればいい、です。自分がデザイナーの言葉を覚えてから指示を出すのではなく、AIに「何を意図して、どの技術を使ったか」を言わせる。人は「こっち」と決めるだけ。言葉はあとから身につきます。

AIをアートディレクターの位置に置く。いままでは言葉を知っている人だけが指示できた。逆転すると、AIが技術と意図を言葉にし、人はこっちと決めるだけ
図2 言葉はAIに出させ、人は決めるだけにする。

感想の裏には、必ず具体がある

「なんかAIっぽい」の裏には、全面にグラデーション、要素が全部中央寄せ、余白が均等すぎる、のような名指しできる具体が必ずあります。評価とは点をつけることではなく、その具体を見つけて言葉にすることです。AIに「私の違和感は、色・構図・余白・書体のどれの話?」と聞き返させると、翻訳が進みます。

感想の裏には必ず具体がある。「なんかAIっぽい」が、全面にグラデーション・要素が全部中央寄せ・余白が均等すぎる、の3つに翻訳される
図3 評価とは、この翻訳をすること。

内側のループ:基準を書いて、別の記憶で採点する

採点基準は書く。書いたら答え合わせをする

「いい感じ」は採点できませんが、書き下せば採点できます。ここまでで出てきた具体の言葉を並べたものが採点基準です。ただし、書いただけの基準は信用しません。自分がすでに良い・悪いと判定したスライドを10本用意し、その基準を持たせた採点役に見せて、何本が自分の判定と一致するかを見ます。STΛCKは基準を4回書き直して、10本中7本が合うところまで来ました。合わないうちは、自分の目ではなく基準のほうを疑います。

毎回のチェックは「別の記憶」で

サムネを作らせた同じチャットで「これ採点して」と頼むと、作った本人が自分の作品を採点する形になり、さっき自分で選んだ理由をなぞって高めの点をつけます。だから採点用のスキルを制作スキルとは別に1本用意し、制作の最後の手順で新しい記憶で起動させます。渡すのは、できあがった画像と、採点基準を書いたファイルの2つだけ。どう作ったかの会話は渡しません。

毎回のチェックは別の記憶で。制作スキルが成果物を出し、採点役は別の記憶で起動して成果物と採点基準だけを受け取り、直す/通すと引っかかった箇所の言葉を返す
図4 採点役は初めてその画像を見る人として、点数と引っかかった箇所を返す。

たまったら直す。そして、効いているかを見る

外側のループ:たまったらスキルを直す

ここでやっと質問1に答えられます。採点して改善の方向を出すスキルを動かすのは、失敗したときでも定期でもなく、記録が何件かたまったときです。

内側のループが毎回残す「直す/通す」の判定と、自分が最後にどうしたか(採用した・手直しして使った・捨てた)を、毎回セットで記録します。何件かたまった時点で、同じ引っかかりが繰り返し出ていないかを読ませて、スキルのどこに何を足すかを提案させる。1件ごとに直さないのは、次の1件で逆に振れるからです。「毎週見直す」とカレンダーで決めないのは、記録のたまり方と噛み合わないからです。

STΛCKの実物は、道具2つと決まり2つです。AIが出した数案をブラウザに並べてクリックで選び、一言添えると記録が残る画面。その記録を台帳に1行書く小さなスクリプト。案を選ばせる場面では必ずその画面を通す決まり。記録を残さずに終えようとしたら1回だけ差し戻す決まり。記録は「仕組み」より「置き場」で、選ぶ行為の中に埋め込むと忘れようがありません。

監視は、効いているのか

質問2は、STΛCK自身が一度そのまま踏んだ話です。使い忘れに注意を出す監視を入れてしばらくは、注意が出ているのを見て効いていると思っていました。ところが注意のあとのログを10本ほど読み返すと、注意が出たあとで実際にそのスキルが使われた回は、ほとんどありませんでした。文章ソフトの誤字の赤い波線と同じで、波線は出ている、でも直さずに送っている。

監視が「動いていること」と「効いていること」は別で、その差は数字を眺めていても見えません。だから確かめる順番を決めました。反応した回数を残す。反応のうち本当に使い忘れだったものをログを読んで数える。監視を切った状態で同じ作業を数本やり、使い忘れが本当は何回起きるかを知る(これが分母)。最後に、反応のあとに実際にそのスキルが使われたかを見る。この4つめで一番差が出たので、監視は「注意」から「記録がなければ先に進めない」形に変えました。

質問2の答えも、鎖の1つめの輪と同じです。自分の目で見る。見る相手が、成果物からログに変わるだけです。

AIと働く個人は、何を考えればいいか

特別な道具はいりません。今日からできることが2つと、やらないと決めることが1つあります。

見る工程を手放さない

AIに作らせる量が増えるほど、1枚1枚を見るのが面倒になります。でも見なくなった瞬間に、自分の評価軸は育つのをやめて、AIの平均的な評価軸に置き換わります。

今日からできること:成果物は必ず自分の目で見る。AIに採点させるのは、自分が見たあと。数字だけを見て採用しない。

「なんか違う」と言った直後に、翻訳させる

違和感は感想のままだと消えます。言葉になれば残ります。翻訳する役は自分でなくていい。

今日からできること:聞き方の型を3つ持つ。「このデザインで何を意図して、どの技術を使った?」「私の違和感は、色・構図・余白・書体のどれの話?」「根拠つきで2案出して。私が決める」。

引き算はひとつ。1件の失敗でスキルを直さない。たまってから。点数の横に「引っかかった箇所の言葉」がない記録は材料にならないので、点数だけの記録を増やすのもやめます。

まとめ

評価は「見る、言葉にする、基準にする、毎回チェックする、たまったら直す」の鎖で、右端の仕組みから作ると材料が届きません。差は感性ではなく言葉。言葉はAIに出させて、人は決める。採点は別の記憶で、改善は件数がたまってから。

次の一歩は1つだけ。今日AIに作らせた1枚に「なんか違う」と思ったら、その場で「私の違和感は、色・構図・余白・書体のどれの話?」と聞いてみてください。返ってきた言葉が、あなたの最初の採点基準です。感想はFunStackのDiscord「作業ラボ」の部屋へ。

ことば帳
スキル
AIにやらせる仕事の手順書。「サムネを作る」「スライドを組む」のように、仕事ごとに1本ある。
採点基準(ルーブリック)
良い・悪いを判断する物差しを文章にしたもの。「余白が均等すぎない」「書体は2種類まで」のように具体で書く。
内側のループ/外側のループ
内側は1回の制作の中で毎回回るチェック。外側は何回か制作したあとに回る、スキルそのものの見直し。
別の記憶で起動する
会話の記憶を切り離して、まっさらな別のAIを立ち上げること。作った本人に採点させないための箱。
分母
「本当は何回起きていたか」の数。監視が何回反応したかだけでは成績が出せない。

出典

きっかけ: ファンスタメンバーからの質問と、STΛCKの回答(2026年9月15日)
STΛCKの制作現場の実測: 採点基準の答え合わせ(4版目で10本中7本一致、2026年9月時点)
関連する前回の記事: AIのアクセルをゆるめよう と、AI会社の社長が言い出した話 の「3. 人の価値が残る場所は『判断・評価・責任』」
※ 図解の中の例(ライトブルーと背景の明度、全面グラデーションなど)は説明のための一例で、特定の作品を指していません。

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